「裁判官! 当職そこが知りたかっったのです。」

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岡口基一(裁判官)・中村真(弁護士)の共著「裁判官! 当職そこが知りたかっったのです。」読了。

現職の裁判官が民事訴訟処理についての裁判官の考え方を赤裸々に語るこの本は、多くの人が認めるとおり、民事訴訟に携わる人々にとって必読と思われる。

個人的に特に参考になったところは以下のとおり。

もっとも、一番重要なところは、岡口Jも繰り返し言っているとおり、実際裁判官ごとに違うので、人を見るしかない、ということころかとも思う。

CHAPTER1 書面
問題提起→理由→結論という組立をきちんとする。
事実適示を法的観点から再構成する
訴訟物をしっかり書く
裁判所は訴状で大体の心証を取る。訴状は代理人に対する印象も決める
書面は期日の2日前には出す
しょうもない主張にも一応反論しておくと良い
エモーショナルな書面の効果は裁判官次第
その人がどういう人か分かる情報は書いておく
CHAPTER2 立証
欠席判決が見込まれるときは、自白だけはで判断できない事項(慰謝料の額等)に関する資料は出しておく。
証拠に頁番号を振る
証拠を遅く出す場合には遅くなったことが納得できる理由が必要
CHAPTER3 尋問
陳述書に証拠価値はない。尋問をはしょるためのツール。
裁判官は事実認定の際は動機を中心に考える
CHAPTER4 和解
京都では和解は難しい
総額は負けずに長期分割・2回不払いで期限の利益喪失とすると互いが納得し易い
CHAPTER5 審理の終結
弁論終結から判決まで2ヶ月を越えるとJは当局に報告が必要
ほかの裁判官の単独事件には口を出さないというのは裁判官の暗黙のルール
最終準備書面は、普通は不要だが、直接証拠がない事件では役立つことも。その場合には、強力な反対の間接証拠を潰すのが重要
CHAPTER6 判決
和解協議の内容は判決理由には書けないので、それが判決に影響を及ぼすことは通常はないが、無意識な領域ではあるかも。
審理期間が2年を越えると、裁判所内部の統計に載る。最近は、単独事件で2年を越えることはほとんどない。
CHAPTER7 控訴
控訴の際は、事案の把握のために代表的な陳述書を読む
高裁は主任制なので、「右陪席」「左陪席」はいない
控訴の趣旨の書き方
双方控訴の場合は、原審の認定は真実ではないと考える
CHAPTER8 お仕事事情
引き継ぎはメモによる。メモでは分からない場合の電話は出来るだけしない。
裁判官にとって、どの弁護士が書面を書いたかは大きな関心事。
裁判官がやり易い代理人は、紛争の全体像が把握できている人、周辺の紛争も含めてこの紛争を解決してあげるんだという気概のある人
CHAPTER9 これからの民事訴訟
民事訴訟のレベルは今がベスト(新民訴法による改善後、要件事実教育の消滅前)